マインドフルネス呼吸瞑想の方法の全て

From:堀口寿人
金沢の自宅事務所より

マインドフルネスの原点は仏教にある。

仏教では、マインドフルネス呼吸瞑想法は、悟りに至るための重要な訓練の一つとされていて、出入息瞑想(アナパナ・サティ)として、解説されている。

そんな仏教の経典の中に、「出入息念経」というお経がある。このお経は、簡単に言うと、マインドフルネス呼吸瞑想法だけを徹底的に解説しているお経なのだ。

なので、もしあなたが「マインドフルネス呼吸瞑想法について詳しく知りたい」と思っているとしたら、これ以上の教材はまずない。

というわけで、今回は、出入息念経をベースにして、マインドフルネス呼吸瞑想法の真実をお伝えしたいと思う。

ただ、僕は今回この記事を書いたことを少し後悔している。というのは、マインドフルネス呼吸瞑想法の真実を追求するあまり、あまりに上級者向けの内容になってしまったからだ。

なので、もし、あなたがマインドフルネス瞑想を全く知らないとしたら、この記事はおススメしない。まず「マインドフルネスとは?話題のマインドフルネスの意味をしっかり解説」を読むことをおススメする。

マインドフルネス瞑想の基本

ここからは、あなたがある程度マインドフルネス瞑想について知っているという前提で話を進めていく。

とは言え、準備運動も必要だと思うので、簡単におさらいだけしておこう。

まず、マインドフルネス瞑想は、「今この瞬間に起こっている現象に気づく」訓練だ。そして、現象の変化に気づくためには、何かしらの対象を観察しなければいけない。

そのときの観察対象が、4つある。

  • 身・・・身体を観察する
  • 受・・・感覚を観察する
  • 心・・・心を観察する
  • 法・・・法則を観察する
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このうち、呼吸瞑想では、呼吸をしているときの身体の変化や感覚(身や受)を観察するのが一般的だ。それが一番観察しやすいからだ。でも、実際は、4つ全ての観察対象を通して瞑想を実践できる。

つまり、呼吸の出入りを通して

  • 身体も観察できるし
  • 感覚も観察できるし
  • 心も観察できるし
  • 法則も観察できるということだ。

ここまでの理解を踏まえて、マインドフルネス呼吸瞑想法のやり方を順番に見ていこう。

マインドフルネス呼吸瞑想1:身体を観察する方法

まず、マインドフルネス呼吸瞑想法の1つ目の観察対象が、身体だ。これは呼吸を通して自分の身体を観察する方法だ。経典によると、身には次の4つの方法がある。

長い呼吸

長く息を吸っているときは、「自分は長く息を吸っている」と知る。長く息を吐いているときは、「自分は長く息を吐いている」と知る。

これは、長く息を吸っているときは、その状態を感覚的に感じ、「自分は長く息を吸っている」と理解するという意味だ。長く吐く場合も同様に。

短い呼吸

短く息を吸っているときは、「自分は短く息を吸っている」と知る。短く息を吐いているときは、「自分は短く息を吐いている」と知る。

これは、短く息を吸っているときは、その状態を感覚的に感じ、「自分は短く息を吸っている」と理解するという意味だ。短く吐く場合も同様に。

空気の塊を感じて

私は、空気の塊を感じて息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、空気の塊を感じて息を吐き出そう、とこのように修学する。

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僕たちが息をするという事は、何かしら空気の塊を吸い込んだり吐き出したりするということだ。

実際には、空気を、「ここからここまでが息として吸い込む空気」というふうに切り分けることは難しい。でも、呼吸瞑想が進むと「今入り始めの空気だな」「これは出ていく終わりの方の空気だな」のように、空気のどの部分が出入りしているかも観察できるようになる。

身体を動かす意思を静めながら

私は、身体を動かす意思を静めながら息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、身体を動かす意思を静めながら息を吐き出そう、とこのように修学する。

これは「身体を動かしたいという意志を静めながら、呼吸訓練をしましょう」ということだ。

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マインドフルネス呼吸瞑想法は、どんな体勢でもできるが、一番ポピュラーなのは座禅だろう。そして、一旦マインドフルネス呼吸瞑想法を始めたら、呼吸する以外は一切体を動かさないことが基本になる。指一本でさえ。

そうすることで、心があちこち分散するのを防いで、心を呼吸という一点に集中させるわけだ。心を呼吸に集中させることで、僕たちは、呼吸を通して、普段感じられなかったような様々な現象を理解できるようになる。

例えば、呼吸に心を集中させることで、一番最初に分かることは、「自分の息が出入りしている」という事実だ。僕たちは、「自分が呼吸しているという事実」すら普段意識できていない。そして、呼吸瞑想が進むにつれて、呼吸の温度や、触れた感覚、呼吸の生滅など、様々見えてくるわけだ。

でも、困ったことに僕たちは、身体を動かしたくてたまらない。なぜなら、身体を動かすことで、色んな刺激を取り込めるからだ。僕たちは刺激が好きなのだ。

だから、呼吸瞑想をやるとき、僕たちが生来持っている習性と逆のことをやらなきゃいけない。そうすることで呼吸瞑想がどんどん進むことになる。

マインドフルネス呼吸瞑想2:感覚を観察する方法

次が、受の観察だ。これは、呼吸を通して、感じる感覚を観察する方法になる。次の4つの方法がある。

喜びを感じて

私は、喜びを感じて息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、喜びを感じて息を吐き出そう、とこのように修学する。

これは「喜びが生まれていることを感じながら、呼吸訓練をしましょう」ということだ。

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心を呼吸だけに集中させると、心はビタッと平静になる。

普段の僕たちの心が、海の波のようだとしたら、呼吸瞑想がうまく行っているときの心は、風が全くない晴れた日の湖の水面のような感じだ。波一つなく、穏やかで、澄み切った感じ。

この状態の時、心には喜びが生まれる。喜びと言っても、テレビを見ていて感じるような雑な喜びじゃなくて、もっときめ細やかなすっきりした喜びだ。日常では、あんまり生まれないタイプの高いレベルの喜びと言おうか・・。

楽を感じて

私は、楽を感じて息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、楽を感じて息を吐き出そう、とこのように修学する。

これは「身体が楽になる感じを感じながら、呼吸訓練をしましょう」ということだ。

心に喜びが生まれているとき、身体も楽になる。例えば、本来長い時間座禅を組んでいると足が痛くなる。でも、呼吸瞑想が進んでいると、そういった痛みはほとんど感じなくなる。さらに、身体も軽くなる。

足に痛み信号を出しているのも脳、足に楽信号を出しているのも脳。そう考えると、人の脳(心)とは、面白いものだとつくづく思う。瞑想することで生まれる感覚が全く変わってしまうのだから。

考える意志を感じて

私は、考える意思を感じて息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、考える意思を感じて息を吐き出そう、とこのように修学する。

これは「考えたいという意思を感じながら、呼吸訓練をしましょう」ということだ。

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昔、中学の理科の時間にこんな勉強をしたのを覚えているだろうか?

地震の話だ。地震は2段階に分かれていて、普段僕たちが「地震だ」と気づくものは、主要動と呼ばれるという話。でも、実は、主要動が来る前に、小さな初期微動が生まれている。

つまり・・・、初期微動が観察されたということは、次に主要動が来るというサインなのだ。

これと似ていて、僕たちは、何か考え事するとき、必ず考え事の前に、「今から考え事をしよう」という意思が生まれている。そういった意志があると気づくわけだ。

考える意志を静めながら

私は、考える意思を静めながら息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、考える意思を静めながら息を吐き出そう、とこのように修学する。

ここで言われているのは、「考える意志が生まれたことに気づいたら、それを静めて、また呼吸に意識を集中させましょう」ということだ。

マインドフルネス呼吸瞑想3:心を観察する方法

3つ目の観察対象が心だ。心とは、ざっくり言うと、思考や感情のことだ。これも4つの方法がある。

思考や感情を感じて

私は、思考や感情を感じて息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、思考や感情を感じて息を吐き出そう、とこのように修学する。

受の段階で、考えようとする意志を感じて呼吸訓練をするという項目があった。これは、「その意志によって生まれた思考や感情を感じて呼吸訓練をしましょう」という意味になる。

心を喜ばせながら

私は、心を喜ばせながら息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、心を喜ばせながら息を吐き出そう、とこのように修学する。

これは、「呼吸の出入りに気づくことによって、心に喜びが生じるという現象を観察しながら呼吸瞑想しましょうという」意味だ。

マインドフルネス呼吸瞑想法では、呼吸の出入りの一瞬一瞬の気づきによって、心に喜びが生まれる。その様子を観察しながらといった感じだ。

心を集中させながら

私は、心を集中させながら息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、心を集中させながら息を吐き出そう、とこのように修学する。

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これは、「呼吸の出入りへの気づきによって集中力がどんどん高まる様子を理解しながら呼吸訓練をしましょう」という意味だ。

呼吸の出入りの一瞬一瞬の気づきは、喜びを生むだけでなく、集中力もどんどん高めてくれる。まるで、太陽の光を大きな虫眼鏡で針の先ほどの一点に集中させていくように。

ご想像通り、その一点にはものすごいエネルギーが集中することになる。その結果、僕たちが普通の精神状態ではまず気付けないような、微細な現象にも徐々に気づけるようになって行く。まるで、顕微鏡の倍率をどんどん上げていくように。

心を自由にさせながら

私は、心を自由にさせながら息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、心を自由にさせながら息を吐き出そう、とこのように修学する。

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これ項目は、「呼吸の出入りへの気づきによって、心がどんどん軽く自由になる様子を理解しながら呼吸訓練をしましょう」という意味になる。

呼吸の出入りに気づくと、心に喜びが生じ、集中力が高まっていくとお話した。さらに、その状態の時、心は一時的に欲望がほとんどない状態になる。

というのも、心のエネルギーは完全に呼吸の観察だけに使われているので、「あれが欲しい」とか「あの人が嫌だ」とか、そういったことに使われるエネルギーはないわけだ。そうなると、心は欲望という束縛から放たれて、自由で軽い状態になる。

マインドフルネス呼吸瞑想4:法則を観察する方法

最後4つ目の観察対象が法則だ。これまでの4つの観察対象の中で、これが一番観察するのが難しい。かなり呼吸瞑想に熟達した人じゃないと、まず観察できない。でも、これだけ説明しないわけにもいかないので、一応説明しておく。法にも4つ方法がある。

無常を観察しながら

私は、無常を観察しながら息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、無常を観察しながら息を吐き出そう、とこのように修学する。

無常とは、仏教が解き明かした世の中の法則の一つで、「世の中に不変のものは何一つない」という事実だ。

このことは科学のおかげでずいぶん理解しやすくなっている。

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例えば、人間は、心と物質(身体)からできている。物質は究極まで分解すると、素粒子になる。その素粒子は、一瞬たりとも安定していないことが分かっている。常に素粒子同 士でもエネルギーが行き来して、変化しているわけだ。

そう考えると、例えばダイヤモンドのような、どんなに変化していないように見えるものでも、ミクロの世界では常に変化していることが分かる。

心に関しては、目に見えないし、今のところ計測器で測ることもできない。でも、自分の感情を観察してみれば、常に思考や感情は変化しているという事実がよく分かる。

この項目は「無常を、頭の中だけの理解じゃなく、実際に体験によって理解しながら、呼吸訓練をしましょう」という意味だ。

離貪(りとん)を観察しながら

私は、離貪を観察しながら息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、離貪を観察しながら息を吐き出そう、とこのように修学する。

離貪とは、欲を離れるという意味で、欲が完全にない心理状態を意味している。

たいてい、僕たちのような一般的な生活をしている人間は、どんなときも必ず多かれ少なかれ欲が心の中にある。だから、まず離貪の状態は体験できない。

ただ、呼吸瞑想がどんどん熟練し、無常を観察できるようになったら、世の中には執着する価値のあるものは一つもないことに体験的に理解できるようになる。そうなったときに、心は離貪の状態になる。

この項目は、「自分の心が離貪の状態であることを観察しながら、呼吸訓練をしましょう」という意味だ。

涅槃を観察しながら

私は、涅槃を観察しながら息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、涅槃を観察しながら息を吐き出そう、とこのように修学する。

前に書いた記事「仏教式!問題解決の王道プロセス:手順や進め方」で四聖諦(ししょうたい)という問題解決プロセスに触れた。

四聖諦では、「我々の悩み苦しみの根源は、欲望であり、欲望を捨断することで、涅槃(悟り)に達する」と教えている。

つまり、離貪の状態になるという事=涅槃に達するということだ。涅槃とは、悩みや苦しみが完全になくなった状態だ。イライラすることも、ネガティブになることも、欲張ることも、人と比べることも、自己嫌悪に陥ることも、卑下することも、劣等感を感じることも、全くない状態。

ちょっと僕のような凡人には理解できない状態だが、それが心の成長のゴールということになる。つまり「涅槃を観察しながら、呼吸訓練をしましょう」というのが、この項目の意味だ。

捨断を観察しながら

私は、捨断を観察しながら息を吸い込もう、とこのように修学する。私は、捨断を観察しながら息を吐き出そう、とこのように修学する。

捨断とは、欲や怒りといったネガティブ感情を完全に断ち切るということだ。言いかえると、「“自分にはもう二度と欲や怒りといったネガティブ感情が生まれることはない”ということを観察しながら、呼吸訓練をしましょう」という意味になる。

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例えば、小さいころ、あなたは火か熱湯で火傷をした経験はないだろうか?

小さいころは「熱いよ!火傷するよ!」と言われても、よく分からないものだ。それで、実際に触ってみて「ギャー!熱―い!」となって、初めて「火は熱い」ということが体験的に分かる。

当然、大人のあなたは火の熱さはよく理解しているだろう。そして、同時に「火の熱さが分からなかったころにはもう戻れない」と理解できるはずだ。これは、言いかえると、火の熱さに対する無知を捨断したということだ。

これと同じように、呼吸瞑想によって欲や怒りといったネガティブ感情を捨断した場合も、「もう完全に捨断した」と体験的な理解が得られる。

まとめとお詫び

マインドフルネス呼吸瞑想法では、瞬間瞬間の呼吸の出入りを観察する。そのときに、観察対象となるのが、

  • 身・・・身体を観察する
  • 受・・・感覚を観察する
  • 心・・・心を観察する
  • 法・・・法則を観察する

の4つだ。ただ、ある程度の熟練度までは、身と受の観察だけで十分だろう。

また、当初、この記事では「マインドフルネス呼吸瞑想法のやり方」について、具体的に解説しようと思っていた。

ただ、前に書いた記事「今日からできる!マインドフルネス瞑想の効果的な正しいやり方」で、呼吸法のやり方も解説しているし、ちょうどマインドフルネス呼吸瞑想法を解説するのにおあつらえ向きの仏教経典もあったので、あえてそれを紹介した。

せっかく縁があってマインドフルネス呼吸瞑想法を実践しようと思っているのなら、あなたにはぜひ「本物」を知って欲しいと思う。

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