人間性(人間力)の意味とは?心理学と脳科学の視点から解説

From:堀口寿人

この記事では、人間性(人間力)の意味を解説する。

あなたもご存知のように、僕たち人間は、他の生き物とは違う。カブトムシとも、カエルとも、ワニとも、カラスとも、ライオンとも違うわけだ。

でも、「何が違うのか?」と聞かれて、あなたははっきりと答えられるだろうか?

その“違い”こそが、人間性(人間力)を探るポイントだ。

というわけで、人間性(人間力)について解説していくが・・・その前に、人間性と人間力という言葉の違いに触れておきたい。

人間性と人間力

人間性と人間力の意味の違い

最初に結論から言うが、まず「人間力」という言葉は辞典にはない。少なくとも心理学辞典には載っていない。

一方で、「人間性」という言葉は、心理学辞典に載っている。

これはどういうことか?

つまり、「人間力」という言葉は俗語で、正式な言葉じゃないという事だ。「人間性」という言葉は正式な言葉として認められているということになる。

「正式とは何か?」という話になると、どんどんややこしくなるので、この辺にしておくが。

まあ、正式かどうかの違いだけで、人間性と人間力はほとんど同じ意味だと考えればいい。少なくとも僕はそう考えている。

そう思う理由は一応あって・・

知性と知力

「知性」と「知力」という言葉の関係も、それと似ているからだ。心理学辞典では「知性」という言葉は載っているが、「知力」という言葉は載っていない。

でも、だいたいこの2つの言葉は同じような意味で使われる。

「○○力」は分かりやすい

つまり、正式には「人間性」「知性」というわけだけど、「人間力」「知力」と言った方が一般にはイメージしやすいわけだ。

おそらく、そういう理由で「人間力」「知力」って言葉が俗語として出来たんだと僕は思う。

というわけで、誤解がないように、最初に説明しておいた。これからは正式な名前である「人間性」という言葉を使うので、ご理解いただきたい。

心理学から見る人間性の意味

早速、人間性の意味を見ていこう。人間性というのは心理学に関する用語なので、心理学的な視点で人間性の意味を考えるのは妥当だろう。

意味の引用は、アメリカ心理学会が発行しているAPA心理学大辞典を参考にした。

人間性(humanity)の意味

APA心理学大辞典で「人間性」とひくと、次のように解説されている。

特定の他人と個人的関係において示される思いやり。親切心、助成心、慈善、愛など。

あっさりした説明で、何だか拍子抜けするが、まあ要するに、「思いやり」とか「道徳心」みたいなものだと理解すればいいだろう。

これじゃちょっと物足りないので、人間性に関する他の用語の意味も見てみよう。

人間性回復運動(human-potential movement)の意味

次に「人間性回復運動」という聞きなれない言葉の意味だ。言葉は難しく感じるかも知れないけど、意味は簡単だ。

人間的成長、発達、対人関係の思いやり、より大きな自由、生活の自発性への探求に基づく、精神療法及び心理学へのアプローチのこと。

要するに、「人間がより成長するような、より他人に思いやりを持てるようになるような心理療法のアプローチ」というような意味だ。

ここから、「人間が成長する=思いやりが大きくなる」という構図がうかがえる。だから、人間性には「成長する力」みたいなものも含まれているようだ。

人間性心理学(humanistic psychology)の意味

これも心理学的にはとても重要な言葉だ。意味は次の通り。ちょっと難しいので、読み飛ばしてもらっても構わない。

人間性理論(humanistic theory)とも呼ばれる。実存主義と現象学に関連した概念を多く取り入れており、個人が自分で選択し、自分の人生スタイルを創造し、自分のやり方で自己実現する能力に焦点を当てる。そのアプローチは全体論的であり、無意識の分析や行動変容よりも、体験的な方法を通じて人間の可能性を発現させることが強調される。

簡単に言うと、「人の自発的な成長を促すような心理療法アプローチ」のことだ。要は、まわりから「あれしなさい、これはやっちゃダメです」と指示するわけじゃなく、その人が自分で気づいて行動を変えていくようにサポートする考え方だ。

この人間性心理学には、「人には自発的に成長する力がある」という考え方が基盤にある。言いかえると、「人間性=自発的に成長すること」という考え方が含まれているわけだ。

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人間性心理療法(humanistic therapy)の意味

直接的体験を通して個人の成長を促すことを探求し、人間の持つ潜在能力の開発、いまここ、具体的な人格変容、自己責任、自然な過程や自発的な感情表出に身を任すこと等に焦点を当てる。

この言葉は、人間性心理学と重なる部分もあって、要するに「人間性=自発的に成長すること」という考え方があることは間違いない。

つまり人間性とは・・・

心理学的に、人間性の意味を考えた場合、人間性とは「思いやり」とか「道徳心」のことを意味する。そして、「思いやり」とか「道徳心」を大きくすることが人間的成長というわけだ。

じゃあ、続いて、脳科学から人間性の意味を考えてみよう。

脳科学から見る人間性の意味

人間性を司る脳部位

最初にもお話したように、僕たち人間は、他の生物とは何かが違う。その“何か”が人間性なわけだ。

面白い事に、脳科学的に見ると、僕たち人間と、他の生物とを分ける決定的な違いがよく分かる。

その違いというのが、前頭連合野の大きさだ。

脳の中で一番進化的に新しい部分が大脳皮質という部分だ。大脳皮質はいくつかの領域に分かれている。

その中で、脳の前の方には前頭葉という領域がある。さらに、前頭葉の中でも、前の部分に位置するのが前頭連合野になる。図で言うと、赤く丸をした部分だ。

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この部分は、人間の脳で特に発達している部分で、問題解決したりとか、人の気持をくみ取ったりとか、そういう一番高度な情報処理をしている。

他の動物と比べても、人間の前頭連合野は圧倒的に大きい。

前頭連合野の大きさの比較

人間に一番近い生物をご存じだろうか?

もしかして知っているかも知れないが、チンパンジーだ(ちなみにニホンザルじゃない)。

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チンパンジーの脳は他の動物と比べても進化していて、高い能力がある。

そんなチンパンジーの大脳皮質の面積は39,572cm2で、そのうち前頭連合野の面積は6,719cm2くらいと言われている。

じゃあ、人間はどうか?

人間の大脳皮質の面積は135,740cm2、前頭連合野の面積は39,287cm2くらいと言われている。単純に計算して、大脳皮質でチンパンジーの3.4倍、前頭連合野でチンパンジーの6倍にもなる。

人間とチンパンジーの身体の大きさの違いを考えても、人間の前頭連合野は圧倒的に大きいことが分かる。

前頭連合野の中でとくに発達している部分

前頭連合野は、さらに細かい部分に分かれている。

その中でも、人間の脳で、際立って発達している部分がある。それが「脳間・脳内操作系」という部分だ。

この部分こそが、人間を人間らしくしている部分だ。言いかえると、脳間・脳内操作系が人間性を作っているわけだ。

そして、脳間・脳内操作系という部分の働きが、人間性知性(HQ)と呼ばれるものだ。つまり、脳科学的に言うと、人間性知性(HQ)こそが人間性の正体というわけだ。

ここまで、おさらい。人間性を司る脳の部位は「大脳皮質>前頭連合野>脳間・脳内操作系」という感じの関係性になっている。

それで脳間・脳内操作系の働きが人間性知性(HQ)と呼ばれる。人間性知性(HQ)こそが人間性の正体だ。だから、脳間・脳内操作系が壊れると、僕たちは人間性知性(HQ)を発揮できなくなり人間らしくいられなくなる。

人間性知性(HQ)の構造

じゃあ「人間性知性とは?」という話に移ろう。

そもそも、「単に“知性”と言えばいいのに、何でわざわざ“人間性知性”というのか?という話だ。

その理由は、実は、知性と言うのは、何段階ものピラミッド状の構造になっているからだ。低いレベルの知性もあれば、すごく高いレベルの知性もあるということだ。

だから低いレベルの知性であれば、人間じゃなくても他の動物でも持っている。そんな色んな段階の知性の中で、人間性知性は最高ランクに位置している。

具体的にどんな構造になっているかと言うと、こんな感じだ。

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上の紫の四角で囲んだ部分が人間性知性の部分だ。よく見てもらうと分かるように、知性のピラミッドは単純じゃない。

下のレベルにもまたピラミッドが存在する。おそらく、さらにその中にもピラミッドがあると考えられる。

こんな感じで、知性は、ピラミッドの中に、ピラミッドがあって、その中にさらにピラミッドがあって・・・という構造になっていると考えられている。

例えはよくないかも知れないが、この構造はヤクザ組織に似ている。

例えば、本家(一次団体)のある組員Aが子分を抱えて自分の組(二次団体)を持ったとする。

この場合、Aは一次団体の組員であると同時に、二次団体の組長になるわけだ。

同じように、二次団体の組員Bが子分を抱えて自分の組(三次団体)を持ったとする。

この場合、Bは二次団体の組員であると同時に、三次団体の組長という形になる。

このヤクザの例で言うと・・・

人間性知性は、知性という大きな集合体の中のトップ、つまり本家(一次団体)という位置づけになる。

その本家(一次団体)には色んな組員(つまり二次団体の組長)がいるわけだが、特に力がある組員が3人いる。

それが、社会的知性フレーム、言語フレーム、感情的知性フレームの3だ。フレームとはヤクザで言う“組”みたいな感じだと思ってもらえればいい。

3つのフレーム

まず言語フレームというのは、言葉を処理を担当しているフレームになる。言葉を発信したり受信したりというような働きを担っている。

社会的知性フレームは、人間関係が今どういう状況にあるのかを理解・記憶し、それに基づいて適切な行動をとる働きを担っている。

感情的知性フレームは、自分や他人の感情を理解・記憶し、自分の感情を適切に制御する働きを担っている。

当然、これらの3つのフレームは、ピラミッド構造になっていて、頂点にはそれぞれの組長が存在する。それら組長は、人間性知性という本家の組員というわけだ。

人間性知性の働き

さあ、ここからが本題だ。人間性知性がどんな働きをしているのかということだ。脳科学では、人間性知性には次のような働きがあることが分かっている。

  • 未来志向性、計画性
  • 高度なワーキングメモリ
  • 自己制御(感情の制御)
  • 協調的マインド操作
  • 主体性、独創性、創造性
  • 好奇心、探求心
  • 意欲、意志力、注意力、集中力

この中でも、特に人間に特徴的なものを赤字で強調した。要するに、「赤字のものは人間性の中でも特に人間的なもの」ということだ。

未来志向性

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未来志向性というのは、将来に向けて夢を描いたり、その夢を実現するために計画を立てて実行する力のことだ。これは他の動物にはない能力だ。

例えば、進化的に人間に一番近いとされるチンパンジーでも、40分~2時間先まで見通すのが限界と言われている。

ちなみにニホンザルなど旧世界ザルと言われるサルたちは、数秒先のことすら見通せない。だから、その瞬間瞬間の損得で動くというわけだ。

これは、自制心とも関連が深い項目だと考えられる。

高度なワーキングメモリ

ワーキングメモリというのは、何か考え事をするために一時的に取り出しておく記憶という意味だ。

例えば、あなたが今から紙を切ったり貼ったりして、工作をするとしよう。この場合、あなたがすべきことは、机の上に、紙、ハサミ、カッター、のりとかを出すことだ。

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机の上に紙だけでは工作できないし、ハサミだけでも工作できない。必要なものは全部机の上に取り出しておく必要がある。

これと同じように、考え事するときも、必要な記憶を取り出す必要がある。それがワーキングメモリと言われるものだ。

人間は記憶をワーキングメモリとして取り出しておける時間がとても長い。

例えば、チンパンジーで数時間、ニホンザルなど旧世界ザルで1時間未満と言われている。人間は必要であれば何日でも取り出しておける。

あなたも、どうしても解決しなきゃいけない問題があるときに、何日も頭の中で解決策を考え続けた経験がないだろうか?要はそういう能力のことだ。

これは、思考力とか問題解決力に関連が深い項目だと考えられる。

協調的マインド操作

これはマインドリーディングとマインドコントローリングという2つの働きを意味する。この2つは基本的セットで働く。

まあ簡単に言うと、人の心を読んで、人の心をコントロールしようとする働きのことだ。

字面だけ読むと、腹黒い感じがするかもしれないが、実は僕たちはこれをよくやっている。

例えば、「今あの人は怒っているから、優しい言葉をかけてあげよう」というのもそうだ。

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「今あの人は怒っているから」というのは、マインドリーディングだ。そして「優しい言葉をかけてあげよう」というのは、マインドコントローリングになる。

というのも、相手がイライラしたままだと、自分にもとばっちりが来そうで嫌なわけだ。だから、自分としてはできるだけ早く身の回りの危険を減らしたいわけだ。そういう計算が働いているということだ。

これは、コミュニケーションに関係している。

今話したように、マインドリーディングとマインドコントローリングはとても人間的な行為だ。でも使い方によっては、自他を幸せにもするし不幸もすることを理解しておく必要がある。

まとめ

心理学的には、人間性とは「思いやり・道徳心」という意味がある。そして、そういう気持ちを大きくすることが人間的成長だと考えられている。

脳科学的には、人間性とは「社会の中で将来に向けた計画を立てながら、前向きかつ理性的・協調的に生きようとする心の働き」という意味だと考えられる。

2つの視点は少し違いがあるけど、共通項を探すとするなら、こんな表現になるだろう。

人間性とは、「他者への思いやりが自分の幸せに通じると理解し、他者への思いやりを持てるような自分になるために、自分を成長させる心の働き」である。

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